年商10億越えの4ステップ
STEP1 理念とビジョンを共有する
STEP2 人事制度を作る
STEP3 ビジネスモデルを強化する
STEP4 新卒採用を行なう

人事制度は細かく作り込んではいけない理由

人事制度を作るときは、慎重に進めなければなりません。
けれども、10億越えを目指している会社の場合は、細かく作り込みすぎないことがじつは大事なのです。

売上10億円とか30億円くらいの会社は、まだまだ成長過程にあり、外部の環境に順応しながら売上を伸ばしていかなくてはなりません。
そうすると、外部環境が変われば、戦略も変わるし、組織も変わります。組織の編成替えをしたり、人事異動をしたりと、コロコロ変わっていくものです。
そのときに人事制度を緻密に作りすぎていると、戦略や組織の変化に対応できなくなってしまう。だから、ある程度ざっくり作っていくのがポイントなのです。

・評価制度の真の目的とは

もっと言えば、ルールを決めるのは、評価制度を緻密に作るのが目的ではなく、社員に理念やビジョンを浸透させるのが目的です。
ところが、完成度の高い制度にすることがいつの間にか目的になってしまう。
こういう組織では壁は越えられません。本当は、社長と社員たちの心の中で価値観が共有できていれば、制度がなくてもいいくらいです。

とはいえ、人は言葉がないと共通の理解ができないので、人事制度を共通言語にしているのです。
たとえば、弊社にはチーフという役職があります。お客様のところに1人で出せるレベルになったらチーフです。
しかし、マネジャーによって「1人で出せる」レベル感が違うため、皆がそれを共有できるように、業務プロセスを分解して、具体的に設定しているだけなのです。
ここで大事なのも、共通言語を作ることではなく、マネジャーたちの目線を合わせること。
査定会議などで、「あいつはまだ1人で出せないから、チーフじゃないね」という具合にマネジャーたちのモノサシが一致すればいいわけです。
したがって、10億の壁を越える段階では、「期待役割」も細かく作りすぎないほうがいいでしょう。

・カギを握るのは「設計」より「運用」

人事制度をうまく機能させるためには、「設計」よりも「運用」のほうが大切だと言えます。
制度を設計してみて次の3点に当てはまらなければ、うまく回らない坪由は運用にあるといっても過言ではないほどです。

・【設計の問題点】

・①諸制度の結合不全

・②仕組みが複雑

・③制度が足りない

では、運用がうまくいかないのはどうしてでしょうか。考えられるのは次の3点です。

・【運用の問題点】

・①運用者の習熟不足

・②目標管理の不徹底

・③社長が制度を無視

このうち①と②は、人事制度の運用にかかわるマネジャーに問題があると言えます。
10億円企業のマネジャーは、数字を上げるのがうまいというだけで肩書きを与えられますから、マネジメントをいっさい知らない人が多い。
そもそも、興味すら持っていない人が大半です。そのため、部下に好かれようと思って評価を甘くしようとしたり、目標設定をいい加減に行なったりしてしまうのです。
これが、運用を失敗させる1番の問題です。

③については、ここでも社長の「オレ様」が顔をのぞかせたという典型です。
制度を回してはみたものの、社長が社員の評価などに納得できなくなり、査定会議で横やりを入れたり、「オレ様」ぶりを発揮して制度そのものを壊してしまうことが少なくありません。
まるで、ビルを踏みつぶしながら縦横無尽に暴れ回る怪獣を見ているかのようです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、これは本当のこと。
外部のコンサルティング会社などが関わっている場合は、
そうした行動に歯止めをかけることができますが、御社が独自に進める場合は、社長ご自身が制度運用の目的と意義を絶えず自覚するしかありません。

そこで、次の項目では、人事制度を運用するためにマネジャーをどう育成するか、これについて述べたいと思います。

・人事制度を通してマネジャーを育てる

人事制度の運用を適切に行ない、なおかつマネジャーの意識づけのツールとして人事制度を活用していくには、次の2点がポイントになります。

・①制度設計の段階でマネジメント教育を同時に行なう

まず、①のマネジメント教育について。

「鍋ぶた組織」を「階層組織」に変えるということは、それまで営業マンとか技術屋だったスタッフを昇格させるわけですから、マネジメントをいっさい知らない。
外部のコンサルタントが来て人事制度の説明をしても、チンプンカンプンで意味が伝わらない。何を説明しても、給与テーブルばかり気にしているといった具合です。

ところが、社内のキーマンを対象にして、戦略や組織の勉強会を半年くらいやってから人事制度を作ると、それらのキーマンも積極的に参画してくれるようになり、
制度の設計がスムーズに進みます。
運用の段階に入ってからも、彼らは制度の目的や意義をすでに理解しているため、運用のスキルを短期間で習得するようになります。

実際に勉強会を行なってみると、見事なくらい順調に回ります。
半年前までは組織も戦略も分からなかった事業部長が、「うちの期待役割はね」と熱く語り出す。
コンサルタントが来ても、社員への説明は自分たちで行なったりします。各部の責任者が内容をきちんと理解していて、質間があると責任者自らが思いを込めて答える。
それによって社内がすごく盛り上がります。
社長も共通言語でみんなと話すようになるし、営業部長なども「うちの価値観はこうだから、こういう営業をしなきゃいけないよ」と、いつも社長が言っていることを心から言えるようになる。
そういうのを社長も見ているから、安心して任せられるようになるわけです。
こうした活動を通して、マネジャーたちに「売ることも大事だけど、組織を発展させることも自分たちの仕事なんだ」と強烈に意識してもらうことができます。

・②査定会議で評価結果の目線合わせを行なう

次は、②の査定会議について。

これまでは社長が鉛筆を舐めて給料を決めてきましたが、それでは「社長=会社」の状態から抜け出すことはできません。
「鍋ぶた組織」を「階層組織」に変えたつもりでも、実態は何も変わらないからです。マネジャーを育成するためにも、半年に1度は査定会議を開くことがとても重要です。

査定会議というのは、社内のマネジャーが一堂に会して、評価結果の目線合わせを行なう場です。
要するに、部下の評価を見せ合いっこして、「この評価はいい、これはおかしい」と議論していくのです。
もちろん、社長もオブザーバーとしてこの会議に必ず出席してください。

どのマネジャーも、ある意味で部下の人生を預かっていますから、この会議は白熱したものとなります。
ここできちんと主張して自分の部下を守れないと、部下の給料は不当に下がったり、必要以上に上がったりするからです。

おもしろいもので、同じ評価基準を与えても、部下の評価を厳しく付けるマネジャーもいれば、甘く付けるマネジャーもいます。
前者は、自分が部下に厳しく接していることを社長にアピールしたがるタイプ。
後者は、部下に嫌われたくないばかりに、ついつい甘くなってしまうタイプ。どちらも、マネジメントができているとは言えません。

そこで、誰かが甘い評価をしていたら、それを叩いて整合性をとるのが、ここでのマネジャーの役割となります。
厳しい評価に対しても同じです。理不尽な評価を見過ごしてしまうと、いずれにしても社員は不公平感を抱くことになるからです。
だから、言いにくいことも、どんどん言わないとなりません。
最初のうちは、20人のメンバーを査定するのに8時間くらいかかりますから、慣れてくるまでは土日の開催をお勧めしています。
そして、3回くらい行なうと、評価基準や期待役割などに関して、だいたい目線が合うようになります。

この査定会議が終わったら、その結果を部下にフィードバックするのもマネジャーの役割です。
給料を上げるフィードバックは簡単ですが、下げることだってありうる。そのときに、マネジャーのマネジメントカが磨かれるのです。

査定会議のやりとりをうまく実況中継できるかどうかも、マネジャーの力量しだい。
部下に評価結果をきちんと説明して、納得してもらう。評価が低ければモチベーションが下がるのは当たり前ですが、「次は頑張ろうぜ」と握れるかどうかがすごく大事。
そのために、マネジャーはコミュニケーションを駆使したり、部下を動機付けたりしていく必要があるのです。
こうした能力を磨くためにマネジメント・セミナーなどに参加するのもよいでしょうが、大事なのは、ビジネスの現場における課題解決能力がどれだけ高まるか。
だからこそ、実際の業務のなかで行なう評価やフィードバックに、マネジャー育成の大きなチャンスがあるのです。
そしてまた、人事制度が理念やビジョンに連動しているものに仕上がっていれば、それをマネジャーがしっかり回すことによって、社内に理念やビジョンか深く浸透していくのです。

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