◇社長の「ひとり相撲」が成長の足かせに

売上3億円の壁――

それまで順調に伸びてきた会社が最初に突き当たるのが、この壁です。
売上にして3億円足らず、粗利率30%であれば粗利益で約1億円、社員数は7~8名くらいのことが多いでしょう。
会社がこの規模になると、知らず知らずのうちに業績の踊り場に迷い込んでしまう。その結果、売上や粗利益が自然と頭打ちになってしまうのです。

もちろん、
すべての会社がこの壁に悩まされるとは限りません。たとえば、創業社長が超優秀な営業マンで、その右腕となるような優秀な営業マンがいるケース。
あるいは、競争力の高いビジネスモデルで市場に参入するケース。このような場合は、3億円のハードルをスイスイ乗り越えてしまうことも珍しくありません。
とはいえ、それはあくまで特殊なケース。多くの社長が認識しているように、3憶の壁はたしかに存在するのです。
もしあなたがこの壁を乗り越えようとするなら、仕事のやり方を変えなくてはなりません。変えなければ、次の成長ステージにはおいそれと上がれないのです。

売上の8割くらいは社長1人で稼いでいる

誤解を恐れずに言えば、3億の壁に突き当たっている会社の社長というのは、ほとんどが個人事業主のようなやり方で仕事を進めています。
優秀なプレーヤーである社長が自分1人の人脈に頼って見込客を集め、自分1人で営業をかけて受注し、商品・サービスの提供まで自分が中心になって進めている。
売上の8割くらいは社長1人で稼いでいるのが普通です。
いわば、社長が自分自身の背中にエンジンを背負って1人で走っている状態。まさに独走です。
社員の背中にはエンジンがないため、元の場所でおいてけぼりを食っています。
3偉円くらいまでなら、それでも何とかやってこれたかもしれません。しかし、それ以上に売上を伸ばそうとすると、背中のエンジンでは馬力不足です。
なにせ、「社長の稼ぎ=会社の売上」ですから、壁を越えるためには社長がもっともっと稼がなくてはならない。しかし、そんな余裕はどこにもないはずです。

じつは、これこそが「3億円の壁」の正体。
会社とは名ばかりで、社長が「ひとり相撲」をとっている。そして、プレーヤーとしての社長の能力の限界が「3億円の壁」となって目の前に現れているのです。
その延長線上でいくら頑張っても、壁は越えられないでしょう。

3億円の壁の正体とは

では、どうすればいいのか?
個人事業主から抜け出して、本当の意味での会社組織を作ることです。

社長が背中に背負っているエンジンを降ろして、会社というクルマにもっと大きなエンジンを積み直す。
そして、あなたはクルマの運転席に座り、社員たちと一緒になって目的地へと向かうことです。要するに、あなたは現場のプレーヤーを離れて、会社の舵取りをする。
それが、次の成長ステージに上がるための最もたしかな方法なのです。

そのことを実感していただくために、3億越えに悩む社長の事例をご紹介しましょう。

◇社長が努力するほど空回りする悲劇

弊社のクライアントに、セキュリティ商品の販売を手がけるA社があります。
ここのS社長は、もともと東証一部上場の機械商社で営業マンをしていましたが、ビジネス・アイデアを携えて仲間4人と独立、今から7年前にA社を立ち上げました。
S社長は前職で「10年に1人のトップセールス」と呼ばれたほどの人物で、その仲間4人も彼の信頼が篤い営業マンだったので、
A社は初年度から3億円の壁を何なく突破していました。ところがその2年後、経営方針の違いから仲間と対立し、S社長を残して全員が退社してしまったのです。

社員が増えても売上が伸びない

私がS社長にお会いしたのは、それからさらに2年半くらい経った頃。
前職のツテで新たに採用したナンバー2の人材と、中途採用の若手が5~6人、それに奥様が経理を担当していました。
当時のS社長の悩みは、自分がどれだけ頑張っても、ピクリとも売上が伸びないこと。
創業時よりも社員数は増えているのに、かつてのように3億円の壁を越える気配はありません。
S社長はきわめて優秀な営業マンなので、前職のツテをフルに活用して次々に見込客を取ってきていました。
たとえば、マンションの管理組合を回って大量の見込客を集めたり、コンビニエンスストアの本部を口説き落として各店舗への営業を許可してもらったり……。
また、新規市場の開拓にも力を入れていました。

ところが、社長1人の努力ではどうしても限界があります。ナンバー2の人材は、そこそこできると言っても社長の20%程度。
その他の社員はわずか2~3%です。S社長が苦労してコンビニ本部の承諾を取りつけてきても、各店舗の営業を社員に任せると話がまとまりません。
S社長にしてみれば、本部からお墨付きをもらっているのだから、なぜ店舗で断られるのか理解できないわけです。
その他の見込客にしても、社長が営業すると10件のうち6件は決まるのに、社員が行くと1~2件しか決まらない。それが、S社長にはもったいなくて仕方がありません。
せっかく温めてきた見込客をどうして取り逃がすのかと。
いきおい、社員に与える仕事は、成約後の申込手続きや商品の取付作業など、社長のアシスタント業務のようなものが大半を占めていきました。

S社長にしてみれば、愚痴の1つも言いたくなります。

「自分はこれまで以上に頑張っているのに、社員たちは何をやってるんだ。
だいたい、あいつはナンバー2のくせに、部下を育てようともしてないじゃないか!」

そこである日、社長は一大決心をします。

2ヵ月間、現場から離れることにしたのです。
あらかじめ数ヵ月先までの受注を確保しておき、集客と営業をすべて社員に任せようと覚悟を固めました。
自分が現場を離れれば、彼らも奮起して頑張るに違いないと。

ところが、その結果は散々たるものでした。社員の行動はほとんど何も変わらず、受注は限りなくゼロに近い状態だったのです。

それもそのはずです。社員にしてみれば、優秀な社長と同じように仕事を取ってこれるはずもありません。
そもそも社長は一生懸命に社員を育てているつもりでも、商談に同行させたくらいでは、彼らには何をどうすればよいのかさっぱり分からなかったのですから……。
結局、S社長は再び現場に出なければならなくなり、会社を何とかしたいという一心で私のもとを訪れたのです。

業績が伸びない原因は社長にあった

私はS社長と初めてお会いしたとき、こう申し上げました。

「御社の売上が伸び悩んでいるのは、失礼ながら、社長がオレ様だからですよ。
会議中に『もっと意見を言いなさい』と声をかけても、何の反応もないでしょう?
S社長が集客も営業もすべてやっているでしょう? おそらく、現場を社員に任せたこともあるんじゃないですか?」

「えっ、どうして分かるんですか!?」

「それは分かりますよ、社長。私もオレ様でしたから」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「ご想像の通り、社長が現場を退場しなければ御社は成長できません。
ただし、現場を離れるためには、離れるまでの階段をきちんと作っておくことです。
今のビジネスのなかでどんな仕事から社員に任せていくか、その手順をきちんと決めて、正しく実行することが大切なのです」

◇社長の現場退場は「手順」がカギ

弊社に相談にこられる社長は、ほとんどがS社長と同じような危機感を抱いています。
会社の売上が頭打ちになって、何とかしなければダメだと日々思い悩んでいます。
そこで、試しに現場を社員に任せてみたりしますが、まず100%、失敗に終わります。

その理由は、社長がいきなり現場を離れようとするからです。

いきなり社長が離れると崩壊する

3億円企業では、売上の8~9割を実質的には社長1人で上げているのが当たり前。
集客や営業のみならず、おおよそ収益に影響するすべての業務を社長が行なっています。
その社長が何の準備もせずに現場を退場してしまえば、会社はたちどころに回らなくなってしまいます。

社長が現場を離れるということは、言い換えれば、社員や会社が担う仕事がそのぶん増えるということ。
社長が離れてもきちんと仕事が回るようにするには、それらの仕事1つ1つについて、あらかじめ対策を講じておかなければなりません。
多くの社長はそのことを理解していないため、何の手立ても取らないまま現場を離れようとしたり、目の前の課題に優先順位を付けずに場当たり的に対処してしまうのです。

たとえば、前述のA社の場合は次のような課題が想定されます。

・社長がどうやって現場を離れるか?

・社員の営業スキルをいかに高めるか?

・見込客をどのようにして集めるか?

・社長人脈に頼ったやり方をどう変えていくか?

・即戦力の人材をいつ採用するか?

これらの課題にどんな順番で取り組んでいくか、それぞれの課題をどう解決していくか。それが肝心なのです。
おそらく、この現時点ではその段取りがうまくイメージできないでしょう。しかし、ご安心ください。

10億越えに比べると、3億越えの課題は少なく、難易度もそれほど高くありません。
次のステップを1つ1つ実行していけば、きっと壁を乗り越えられるはずです。
そして、ひとたび3億円を突破してしまえば、売上7~8億円くらいまではスッと行ってしまうことが多いのです。

年商3億越えから10億までの4ステップ

STEP1 社長1人では成長できないと覚悟する

STEP2 御社ならではの「商品」を作る

STEP3 マーケティング・スキームを作る

STEP4 即戦力人材を確保する

では、さっそくSTEP1に進みましょう。

わたしたち株式会社CMSは社長退場コンサルティングをご提案しています。
今までに1000社以上の中小企業の実績を元に、業績回復に貢献できる人材を育てる方法、
個人の力量に依存せず、営業組織を組み立て成果を出し続ける手順を指南することができます。

もしあなたが、業績の壁、年商10億、30億円を超えたいならば、こちらの新刊書籍を手に取ってみてください。

社長が現場を離れて、幹部や社員へ営業を任せても業績を伸ばし続ける正しい手順が分かります。
そして、社長に代わる後継者を育て、会社を一代でつぶさない「仕組み」の作り方も学べます。

詳しくはこちらからご確認ください。