年商3億越えから10億までの4ステップ
STEP1 社長1人では成長できないと覚悟する
STEP2 御社ならではの「商品」を作る
STEP3 マーケティング・スキームを作る
STEP4 即戦力人材を確保する

「エーベルの3次元」

前回の記事では、社長という「商品」を買ってくれているからこそ、売上を上げることができている。
しかしそれでは次のステージには到達することはできない、ということをお話しました。
お客様が買ってくれる理由を、「社長」から「商品」そのものにシフトしなくてはならないというわけです。

では、あなたの会社ならではの商品をどう作ればいいのでしょうか?
私がクライアントにお勧めしているのは、「エーベルの3次元」を活用する方法。
アメリカの経済学者D・F・エーベルが事業の領域を定めるために考え出したものです。
ここでは、事業=商品と置き換えて差しつかえありません。商品・サービスは次の3つの軸から成り立っています。

①顧客層

①の顧客層というのは、その商品を誰が買ってくれるか。
売上3億円に満たない会社のように、まだ商品を買ってくれているお客様が少ない場合は、その商品を誰に売りたいか、と考えてもよいでしょう。

②顧客価値

②の顧客価値は、その商品がどんな価値をお客様に提供しているか。
顧客ニーズを満たす顧客のメリットと言い換えてもよいと思います。この顧客価値なり顧客ニーズを満たせないと、他社ではなく御社で買ってもらう理由がないことになります。

③自社技術

③の自社技術は、その価値をどんな方法で提供しているのか。
メーカーの場合は、文字通りこういう技術を使って他にはない価値を生み出している。商社などの場合は、こういう売り方で他にはない価値を生み出している、といった商品・サービスの特性です。

たとえば、ある商社が販売している部品は同業他社よりも割高なのに、県内の機械メーカーに選ばれているとしましょう。
その理由が、他社ではその部品を届けるのに1週間かかるところを、2日で届けてくれるからだとします。
このときの顧客層は「県内の機械メーカー」です。

そして、顧客価値は「他社に比べて5日早く届くこと」になります。なぜなら、県内の機械メーカーにとっては、たとえその部品が割高でも、5日早く届くことに価値を感じているからです。
その理由は様々でしょうが、たとえば部品が5日早く届くことによって、完成した機械を5日早くエンドユーザーのところに届けられるのかもしれません。
あるいは、必要以上の部品在庫を抱えなくて済むのかもしれません。いずれにしても、そこに価値を感じて、その商社の部品を買ってくれているわけです。
そして、この商社の技術は「早く届ける」です。なぜなら、他社よりも早く届けられるのは、商品の入荷方法や配送方法などを独自に開発して、お客様にどこよりも早く届ける技術を備えているからです。

ターゲットと商品・サービスをリンクさせる

「エーベルの3次元」を考えるときは、「その商品を売りたいお客様は誰なのか」を最初に設定してください。
そして、ターゲット(顧客層)を絞った上で、その人たちに自社の商品を選んでもらえる価値は何かを考えます。そうすれば、必要な技術が自然と見えてくるものです。
こうして、ターゲットと商品・サービスをリンクさせていき、その価値を実現するための方法を明らかにしていくのが、3億円の壁を越えるための商品戦略です。
顧客層と商品を組み合わせるときは、何が自社にとっての「顧客価値」になるかを意図して設計してください。
そして「顧客価値」を、社長以外の社員でもきちんとお客様に提供できるように仕組み化していきます。その業務を役割分担して、できるようにするということです。
3億越えでも10億越えでも、その基本的な考え方は同じです。

①あなたの会社ならではの商品を設計する

②その商品を提供するための業務を明確にする

③社員がそれらの業務を回せるように定型化する

この流れはまったく変わりません。

◇効果的な競争優位の生み出し方

あなたの会社で提供しているのが形ある商品ではなく、無形のサービスであることも多いと思います。
その場合も「商品作り」の基本的な考え方は同じですが、目に見える商品がないぶん、お客様に顧客価値を訴求しにくいと言えます。
コンサルティング・サービスなどは、固まりでないとなかなか認識してもらえないからです。
その際に効果的なのは、お客様のニーズに合わせていくつかのサービスを組み合わせて、それをパッケージにして提供することです。
そして、顧客価値をきちんと言語化して、社長以外の社員でもその価値を説明できるようにすることです。

STEP1で、弊社が3億越えのために『ACSELL (アクセル)』という商品を作ったと述べましたが、
ここではその商品を作るときにどうやって競争優位性を持たせたのかを紹介しておきたいと思います。

創業当初の弊社は私の人脈でコッコツと仕事を請け負っていて、見よう見まねで、引き受けた仕事を何でもやっていました。
一生懸命やっていたのでお客様の評価も高まり、次のお客様を紹介してもらうという具合に少しずつ業績が伸びていきました。売上8000万円くらいまではそのやり方で行ったわけです。
しかし、そこに3億の壁がありました。コンサルティング会社の場合、売上と粗利益がほぼ同じなので、粗利1億円の壁にぶち当たったわけです。
売上が伸び悩むようになり、このままではダメになるという危機感を抱き、商品を作ろうと決意したのです。そうして出来上がったのが『ACSELL』。
この商品を作ったお陰で、弊社は3億の壁をまたたく間に越えることができました。
『ACSELL』とは「Achivement of Selling」とクルマの加速装置(アクセル)をかけた造語で、クライアント企業の営業スキルを短期間に上げるためのプログラムです。
営業力の現状分析、各種マニュアルの作成、スキル研修、現場への定着をパッケージにしたものです。
この商品を作るにあたって、私は3つのポイントで競争優位性を持たせました。

事例:競争優位性持たせた3つのポイント

1つめは、新人の営業マンに教えるのではなく、それを受け入れる側の営業マネジャーに教え方を教えるプログラムだということ。
その当時、競合他社が提供していたサービスは、営業マンを対象にして2~3日の研修を受けてもらうという商品でした。
失礼な言い方になりますが、その1回の研修で営業スキルがすぐに上がるものではなく、気づきを与えることによって営業マンが伸びていくことを期待するわけです。
その結果、できる人はできるようになるし、できない人がいても仕方がないというスタンスです。

研修そのものの開催を目的にしている大手企業ならそれでもいいのでしょうが、弊社がターゲット(顧客層)にしている中小企業の場合は、研修をやることが目的ではなく、
研修を受けたあとに会社の売上が上がること、人材が育つことが目的です。

そこで、営業マンを鍛えるのではなく、「営業マネジャーに鍛えるための方法を教える」というように商品コンセプトをズラしたのです。
顧客層から見ると、他社から似たようなスキル研修は購入できますが、それはあくまで新人の営業マンを講師の人が鍛えてくれるということ。
翌年また新人が入社してくれば、同じ研修を頼まなくてはならないでしょう。
その点、『ACSELL』は、新人を受け入れる側の営業マネジャーに部下の指導法を教えますから、新人が入社してきても社内で回していけるわけです。
コンセプトは「自走」。その会社が自分たちだけで走れることを顧客価値にして、他社との差別化を図ったのです。

2つめの差別化は、「マニュアルの作成」「スキル研修」「現場への定着」という3つのステップで営業力強化を進めていくということ。
競合大手は単発商品としてそれぞれのサービスを提供していますが、『ACSELL』は営業力を強化するための一連の業務をパッケージにして提供しています。
なぜなら、弊社がターゲットとする中小企業は、マニュアル化やスキル研修を単発で受けても、それを売上につなげるのは難しいのが現実だからです。

中小企業の場合、どこか1つだけが欠けているということはなく、営業マニュアルや営業ツールも必要だし、面談スキルなどの研修も欠かせない、
売り方の標準化や売れるノウハウの共有も大切……。そして、それぞれのステップをきちんとつなげていかないと、売上には結び付かないのです。

そのため、単発の研修商品だけを売るという発想がそもそも間違っていると考えました。
『ACSELL』がどんなステップを踏むかと言うと、まずはクライアント企業の営業力を分析し、その会社に合った営業マニュアルを作ります。
そして、2日間のスキル研修を営業部全員で受けてもらいます。
その後、SLI(セールス・ロジック・インストール)と言って、営業リーダーや営業マネジャーなどの部下を指導する立場にある社員に対して、学んだロジックを社内に導入するにはどうすればいいか、そのやり方を指導するのです。
マニュアルの作成やスキル研修なら競合商品はいくつもあります。
しかし、それを一連のステップとして、マネジメントの仕方まで網羅している商品は他にありません。
これが2つめの差別化要因となっています。

さらに3つめは、研修商品単体として見た場合でも、何らかの差別化を図っておく必要がありました。そこで目をつけたのが、研修で行なうロールプレイングです。
営業マンの面談スキル研修は、アプローチ、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージングの4つのステップに分かれます。
このうち、ヒアリングのステップではお客様のニーズを間かなくてはなりませんから、あるケースを想定してロールプレイングを行なうことになります。
営業マン役とお客様役が向き合って、実際の面談を想定してコミュニケーションを進めるのです。
ここまでは、競合他社の商品も同じです。
しかし、他社の場合は、たとえば機械部品を販売する会社の研修でも、ロールプレイングでは「家具屋さんの営業になったつもりで、このケースをやってみましょう」となるのが普通です。
研修を受ける側にしてみれば、自分たちは家具など売っていないのだから、少しも実践的ではないわけです。
とくに中小企業の場合は、「うちの業界は特殊だから、家具の販売なんて参考にならない」と不満に思うことが少なくありません。
そこで『ACSELL』は、ロールプレイングの題材を1社1社に合わせて作り込むことにしたのです。

競合他社でも、それなりの追加料金を支払えばオリジナルのロールプレイングを用意してくれますが、お金のない中小企業にはそこまでの余裕はありません。
これは、サービスを提供する弊社にとっても手間がかかることです。
クライアントの社長や営業マンに事前取材をして、商品の特性やお客様の傾向を把握する。それを踏まえてロールプレイングのテキストを作り込まなくてはなりません。
しかし、時間と労力がかかるからこそ、他社が真似しにくい差別化要因となっているのです。

◇商品作りを成功させる2つの心得

最後に、商品を作り込むときの注意点を述べておきましょう。

まず1つめは、競合他社の商品をきちんと分析すること。

たとえば、『ACSELL』は後出しジャンケンなので、当時すでに大手の同業企業から似たような商品がいくつも提供されていました。
そのため、私が商品を作るときにまず行なったのが、それらの競合商品の特性を分析することでした。
主な商品を「エーベルの3次元」の3つの軸に当てはめていき、どのポイントで自社裔品に優位性を持たせるかを考えていったのです。

差別化を図る方法は一概には言えませんが、ベンチャー企業などによく見られるのが、ニッチ戦略です。
大手企業が対象としていない顧客層、あるいは大手企業が攻めきれていない顧客層をターゲットにして、それらのターゲットに最適の価値を提供していくということです。
もちろん、軸を絞り込むのは「顧客層」に限りません。「顧客価値」を特化して差別化を図ることもできますし、「自社技術」を特化して差別化を図ることもできるでしょう。
私の場合は、もともとリクルートで類似商品の営業をしていた経験があり、
常業先の中小企業から「家具屋さんのロールプレイングじゃ、うちでは使えないよ。うちの商品は特殊だから」などと言われることが少なくありませんでした。
そうした見込客のニーズを、自社商品の優位性に活かしていったのです。

もう1つの注意点は、「売り手発想」に陥らないこと。
売り手発想とは「この機能が優れているから、この商品はすごい」という考え方です。

私がセミナーなどで3億円企業の社長と話をすると、こうした発想に捕われている方々が結構おられます。
たとえば、ソフトウェアの開発やウェブサイトの構築を手がけている方々は、みなさん例外なく腕には自信がある。作ることにかけては決して負けないと考えている。
腕に自信があるというのは、自社技術かもしれないけど、商品ではない。そのため、「社長そのものが商品」という状態からなかなか抜け出せないのです。
ビジネスの成功確度を高めるためには、まずターゲットを定めてください。お客様が誰で、それらのお客様のこういうニーズを満たしたい、そのためにはどんな技術を取り入れればよいのか。
こうした買い手発想に転換しなければなりません。
その上で、それをマーケティング・スキームに乗せていかない限り、社長がコネと人脈でやって行くという状態から永遠に抜け出せなくなってしまいます。

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