年商3億越えから10億までの4ステップ
STEP1 社長1人では成長できないと覚悟する
STEP2 御社ならではの「商品」を作る
STEP3 マーケティング・スキームを作る
STEP4 即戦力人材を確保する

◇「マーケティング・スキーム」の5つの要素

会社の現状を「マーケティング・スキーム」に落とし込んで、実際に紙に書き出してみましょう。
この図をご覧いただければお分かりのように、マーケティング・スキームは5つのモジュール(要素)に分かれています。
そのうち、左側が集客を担う上工程、右側が営業と実務を担う下工程に大別できます。

①見込客の抽出

②見込客の育成

③セールス

④納品

⑤顧客化

5つのモジュールは単独で存在しているわけではなく、それぞれの価値が連鎖するほど大きな成果を上げられる関係にあります。
仮に、①と②の集客でたくさんの見込客を集められて、③の営業でも成約率(取引を受注できる割合)が高まれば、売上を大きく増やすことができます。
ところが、集客や営業のいずれかが振るわないと、かえって売上を落とすことになりかねません。
ここでは、マーケティング・スキームの各モジュールを御社の誰が担ってきたかを考えてみてください。

①見込客の抽出

成約の可能性のある見込客をどうやって集めてくるかということ。
商品やサービスによってその方法は異なりますが、たとえば、自社商品の特性に合った顧客リストを収集する。セミナーを開催して参加者のリストを収集する。
新聞や雑誌、ホームページなどに自社商品の広告を打つ……などが一般的でしょう。
3億円企業で言えば、見込客の抽出は社長の最重要業務であることがほとんど。そして多くの場合は、社長個人の人脈に頼って見込客を集めているものです。
あるいは、お客様に頓んで知り合いを紹介してもらったり、地元の青年会議所や法人会などに参加してきっかけを作るというのが典型的なパターンです。
なかには新聞の折り込み広告を依頼したり、情報誌に広告を掲載したりすることもありますが、
それらを組織的にやっているケースは少なく、やはり社長個人の裁量で行なわれていることが多いのです。

②見込客の育成

①の方法で集めた見込客がすぐお客様になってくれればよいのですが、なかなかそうはいきません。
たとえば、自社商品のターゲットとなる見込客のリストがあった場合、今すぐその商品を買いたいという見込客は、全体の約5%にすぎないと言われています。
この人たちを「今すぐ客」と呼んでいます。まだお客様にはなっていないけれど、今すぐにでも買ってくれそうな熱い見込客という意味です。
そして、今すぐではないけれど機会があれば買いたいという見込客が、全体の約15%いると言われています。この人たちを「そのうち客」と言っています。
文字通り、そのうち買ってくれそうな見込客という意味です。
こう考えると、見込客のリストの約20%はお客様になる可能性がある。
「そのうち客」にしても、お得なキャンペーン情報をダイレクトメールで送ったり、商品の関連情報をメールマガジンで定期的に送信するなどで丁寧にフォローしていけば、そのうち買ってくれる可能性がある。
ところが、3憶円企業のほとんどは「今すぐ客」だけを追いかけて、「そのうち客」をケアできていないのが実情。
あえて言えば、社長が営業活動のなかで「あのお客さんは脈がありそうだな」と直感した見込客に対して、思い出したように連絡をとる程度でしょう。
もちろん、5%の「今すぐ客」が順調に増えていけば、売上は上がります。しかし、見込客そのものを社長の人脈に頼っている状況ですから、それも難しいのです。

③セールス

見込客に対して営業マンが商品説明やクロージングをして、成約に持ち込むというプロセスです。
この成否は個々の営業マンのスキルに負うところが大きいのですが、マーケティング・スキーム全体のなかで見ると、
見込客の抽出や、見込客の育成の成果とも大きく関わってきます。

たとえば、見込客の育成がきめ細かくなされていて、営業をかけた時点で、そのお客様は商品のメリットを十分に理解していて、その商品を使ってみたいと感じている。
このような状態を作ることができれば、営業マンの営業トークは不要になるでしょう。
会社と商品が信頓できることをアピールするだけで、申込書にサインをしてくれたりするのですから。そのためにも、見込客の育成は大切です。
なお、3億円企業のケースでは、このセールスも社長が中心になって進めていることが多い。
集客に比べると社員に任せる余地はあるのですが、社長にすれば失注(商談が失敗すること)が怖くて仕方がない。
社長が行けば10件のうち6件は受注できるのに、社員に任せるとせいぜい3件しか決まらない。
せっかく温めてきた見込客を失ってなるものか…ということで、結局は社長が行くことになるのです。
BtoBの取引では、本当は10件のうち3件取れれば間題ないわけです。けれども、社長が優秀なために、そんな部下にはとても任せられないと感じてしまうのです。

④納品

商品をお届けしたり、サービスを提供する業務です。
一連のマーケティング・スキームのなかでは、唯一、社員に任せている割合が高い業務と言えるでしょう。
しかしその一方で、1度は社員に任せたものの、結局は社長が行かざるを得なくなったというケースがとても多い。
なぜなら、お客様のクレームはまさにこの段階で発生するからです。社員のスキルやサービスが不十分なために、ある日、お客様から社長のもとにクレームが入る。
クレームを言ってくれればまだしも、それが風評で伝われば会社の存続が脅かされてしまうことも少なくありません。
それゆえ、社長が手放したくても手放せない業務になっているのです。

⑤顧客化

1回のお客様を固定客にするための仕組みです。
たとえば、銀座のクラブのママが1回しか来店したことのないお客様にバレンタインデーのチョコレートを送ったり、美容院へ行った2ヵ月後に「そろそろ切り時ですよ」というハガキが届いたり、
誕生祝いの花束を買った1年後にお花屋さんから連絡が来たりする。こうしたアフターサービスも、顧客化の1つです。
また、商品を納品した後にきめ細かくアフターフォローをして、リピーターを増やしていくような努力も、もちろん顧客化です。
業種にもよりますが、ひたすら新しいお客様を獲得してくるより、固定客を増やしたほうが、少ない集客コストで安定した商売ができるものです。
お客様を丁寧にフォローしてよい関係を築ければ、御社の熱烈なファンになってくれるからです。
この業務を担っているのは、やはり社長です。お客様を顧客化する仕組みを組織として回している3億円企業はほとんどないため、社長が1人でやるしかないのです。
ただし、社長は新しい見込客を上げるだけで精一杯で、顧客化に積極的に取り組んでいるとは言いがたい状況にあります。

◇あなたの会社の「1年後のあるべき姿」を書き出す

このように書き出してみると、ほとんどの仕事を社長1人でやっていることが浮き彫りになるはずです。
とくに、目の前の売上を上げるのに欠かせない仕事は、ほぼ100%、社長が中心的な役割を果たしています。
社員にも手伝わせてはいるけど、大事なところはどうしても任せられない。
これが、3億円の壁を越えようとしている会社の典型的な業務スタイルです。

5つの要素から抜けていく

この点を社長が認識したら、次は何をやればいいか?
すべてのモジュールから、社長の名前を消していきます。

より正確には、売上に直結する仕事で、なおかつ社長にしかできない仕事以外は、5つの要素のすべてから足抜けしていくということです。

そのために社長は、1年後のあるべき会社の姿を、いま書き出した見取図の下に記入していってください。
すでに書き上げた現状の姿を「ビフォー」とすれば、1年後は「アフター」になります。
こういう状態になれば、自分は現場を離れていると言えるし、社員だけでほほすべての仕事を回していけるという理想像を描いていくのです。

社員だけですべての仕事を回す

たとえば、「納品」は完全に手放して社員の〇〇に任せる。納品時にクレームが発生しないように、納品・取付業務の定型化を図っておく……。
「セールス」を完全に手放して営業スタッフ5人に任せる、営業スタッフの成約率を現在の1割から3割へ高める……といった具合です。

アフターでは、マーケティング・スキーム内の仕事はほとんど社員に任せて、社長は社長にしかできない仕事をやっていなければなりません。すなわちそれが、マネジメント業務です。
経営資源を活用してより高い成果を上げるために、ビジネスモデルをどう設計するか、人材をどう育成するか、組織の体制をどう変えるか……そういったことが社長の中心業務になっていく。
マーケティング・スキームの外にこそ、社長のやるべき仕事があるのです。

こうして「アフターの欄を1つ1つ埋めていく作業が終わったら、それぞれの要素の「ビフォー」と「アフター」をつぶさに見比べていきます。
すると、「ビフォー」から「アフター」へ到達するために解決しなくてはならない課題が自然と見えてくるはずです。
たとえば、営業マンの成約率を現状の1割から3割へ高めるためには、営業スキルの底上げが不可欠です。
その一環として営業マニュアルの作成が必須となりますから、社内のトップセールスである社長がご自身のスキルを言語化して、マニュアルに落とし込まなければなりません。
そうしたことを、「アフター」の下欄に漏れなく書き出していきます。
これで、「現場退場」の見取図が一応は完成したわけです。

◇社長が足抜けする順番を明らかにする

ただし、この見取図にはまだ大切なものが抜けています。
社長が現場から足抜けしていくための施策は列挙されているものの、どの施策を、どんな順番で行なっていくかが記されていません。

この段取りを決めておかないと、売上が落ちたり、クレームが発生したり、社員のモチベーションが下がったり……と、大変なことになってしまうでしょう。

簡単な仕事から社員に任せる

では、どんな手順で、社長は現場を離れていけばいいか?
難易度の低い仕事から社員に任せていくことです。

「難易度の低い仕事」とは、社長のせいぜい20%しか仕事のできない社員でも、業務を定型化することによって代替しやすい仕事ということ。
もっと言えば、売上にさほど影響を与えない仕事ということです。

たとえ社員がやりやすそうな仕事でも、もし失敗したときに会社の売上に深刻な影響が出るようでは困ります。
そのため、商売の「要」になる仕事ほど、難易度が高いと考える。逆に、社員が失敗しても商売にさほど影響を与えない仕事ほど、難易度が低いと考えるわけです。
これは業種や業態によっても若干異なりますが、一般的には、マーケティング・スキームを描いたときに右側の業務、すなわち下工程にある業務から社員に任せていくのが鉄則です。
集客のような上工程の仕事は、商売を発生させるところ。言い換えれば、会社にとって大切な意思決定を行なう場。ここは、社長がある時期までは手放さないほうが、会社の業績を安定させやすいのです。

集客の仕組みをつくる

弊社が3億円の壁を越えたときも、最後まで手放せなかったのが「集客」です。

弊社のようなコンサルティング業の場合、見込客を集めて、営業をして、受注できたらコンサルティング・サービスを提供するというのがビジネスの流れです。
そのうち、最初に社員に任せたのは「納品」、つまりコンサルティング・サービスを提供するところでした。
当初は、どんなお客様のところにも毎回、私が行っていました。私個人の信用で受注してきた仕事なので、私が行かないとお客様からも「なぜ松下さんが来ないのか」と文句が出てしまいます。
それに、自分で行かないと不安で仕方がなかったのです。
ところが、現場を離れようと決意し、『ACSELL(アクセル)』という商品を作ったところ、その業務の大半を社員に任せられるようになりました。

『ACSELL』は弊社が提供する営業力強化プログラムで、社員の営業スキルを底上げするために各種マニュアルや研修をパッケージにした商品です。
この商品を作った大きな狙いは、私個人の信用でお客様を集めるのではなく、商品の魅力や信用でお客様を集めることにありました。
それまではコンサルティング・サービスのほとんどを私自身が行なっていましたが、商品に興味を抱いてご契約くださるお客様が増えるにしたがって、その大半を社員に任せられるようになりました。
クライアントには『ACSELL』がどんなプログラムなのかを丁寧に説明し、マニュアル作成やスキル研修などをそれぞれの専任スタッフが担当することをご理解いただきます。
その後は、要所要所を私がフォローするだけで、あとは社員だけで回せるようになっていったのです。

しかし、「集客」の場合はそうはいきません。
上がってくる見込客の数が少ないと、どうしても売上が下がってしまいます。
そのため、「納品」の現場からは退場できても、「集客」という商売の要の部分からはそう簡単に足抜けできなかったのです。

これと同じことが、多くの業種に当てはまります。
たとえば、リフォーム業などでも、「納品」すなわちリフォーム現場での仕事は比較的早く手放せるでしょう。
「セールス」も、きちんと仕組みを作ればその次くらいに手放しやすいはずです。
しかし、どんなチラシを作るか、どんな媒体に広告を出すかなど、「集客」の部分は最後まで社長が自分自身で行なっているケースがとても多いのです。
それが商売の生命線だからです。
通信販売業のように営業マンがほとんどいない業種では、ウェブサイトをどう作るか、どうすれば検索連動型広告の上位に表示できるかなど、「集客」の重要性がなおさら高まるかもしれません。

難易度の低い順に仕事を手放していく

とはいえ、なかにはそれが当てはまらない業種もあります。
たとえば飲食業の場合は、地域のタウン誌や無料情報誌に広告を出すくらいのことなら、やり方さえ分かればアルバイトでもできることです。
それよりも「納品」、すなわちきめ細かい接客サービスとか、オーナーシェフの美味しい料理などが、商売の生命線になっていることが多いものです。
ですから、優先順位を付けるときは、あなたの会社にとっての生命線がマーケティング・スキームのどこにあるかを、きちんと見きわめることが大切です。
その上で、難易度の低い順に仕事を手放していくことです。

ここでは、そういう視点で、あなたの会社のマーケティング・スキームのなかで社長がどこから足抜けしていくかを決めてください。
たとえば、次のようなイメージです。

顧客化→納品→セールス→見込客の育成→見込客の抽出

これは、マーケティング・スキームの下工程から足抜けする典型的なケースです。
ただし、5つのモジュールのうち、「顧客化」と「見込客の育成」については現時点で何もやっていないという会社がほとんどでしょう。
その場合は足抜けの順番に含める必要はありませんが、そのまま放置するのではなく、いずれはその仕組みをしっかり作り込むのを怠ってはなりません。

◇足抜けの「完了期限」を決めておく

ここで、「見取図」を作るときの注意点を2つ挙げておきましょう。

まず、足抜けの優先順位を付けるときは、番号を振るだけでなく、「いつまでに退場するか」という期限を設定しておくことが大事です。
足抜けの期限を設けておかないと、いつまで経っても足抜けできなくなってしまうからです。

今まで…積み上げ型の思考法

3億の壁に悩んでいる社長というのは、多くが「積み上げ型」の思考法で会社を経営しています。
今日があって、明日があって、その延長線上に明後日がある。「今年はいくらの売上があったから、来年はいくらを目標にしよう」という考え方です。

これから…逆算型の思考法

売上3億円くらいまではそうした考え方でも通用するのですが、
会社をもっと大きくしようとすると、「逆算型」の思考法も取り入れなくてはなりません。
つまり、「何年後にこういうビジョンを達成したいから、そのためにはこういう戦略が必要で、今やらなければならないのはこの施策だ」という考え方です。
足抜けの期限をあらかじめ設定しておくことで、自然と「逆算型」の思考法が身に付くようになります。

なぜ「積み上げ型」が相応しくないかと言うと、
「ナンバー2のY君が育ったらこの事を任せよう」とか「売上があと20%増えたら、営業を社員に任せてみよう」などと考えてしまう社長がじつに多いからです。

一見、もっともらしい考え方に聞こえますが、今のやり方を続けていてもY君は育たないし、売上が20%増えることはありません。
いつになったらできるのか不確定な考え方では、いつまで経っても何も変えられなくなってしまいます。
だからこそ、「逆算型」の思考法が大事なのです。最初に期限を決めてしまえば、それに向かって何とかやらざるを得なくなりますから、いま何をやるべきかが自ずと明確になります。
そのために、オシリをきちんと決めておくことが重要なのです。

社長がやってはいけないことを決めておく

もう1つの注息点は、社長がやってはいけないことを決めておくこと。
ステージアップのお手伝いをしていると、クライアント先に出向いているコンサルタントから様々な間題を報告されます。それらのなかで最も多いのが、じつは、社長の言動に関するもの。
「社長がこっそり営業を続けているようです」とか「社長が営業マンにこんな指示を出してしまいました」といった類いの間題です。
前述のように、社長がひとたび覚悟を決めても、改革を進めていく過程でその覚悟が揺らいでしまうことは少なくありません。
ですから、社長が改革を阻害しないように、社長の言動を見守ることも弊社の重要な業務と言えます。

そうしたことを未然に防ぐためにも、
「これを社長がやったら社内が混乱してしまう」ということを禁止事項としてピックアップしておくことが大切なのです。

これで、いよいよ改革に乗り出す準備が整いました。
次のステップからは、社長が現場を退場するための具体策を解説していきましょう。
それらの対策をしっかり講じれば、3億円の壁を越えるのは決して難しくありません。

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